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旅、ときどきネコ

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個人旅行、一人旅大好き。デジタル一眼レフによる旅先の思い出を中心に時々ネコの写真です。09年11月から半年間はドイツ滞在記をupしていました。

危険な任務

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わたしの勤めている会社では金曜夕方4時or5時、つまりヨーロッパ中央時間の朝9時になると社長からニュースレターが届きます。金曜の9時ちょうどというのに相当こだわっているらしく、クリスマスの頃など欧米オフィスがほとんど無人になる頃にはわたしたち東京オフィスにニュースレターを代理で送信するよう依頼が届きます。昨年引き受けた方は、時間ピッタリに送らないと!と10分くらい前からどきどき時計を眺めていたそうです。

大抵は正直言ってたいして面白い内容ではありません。今週どこどこオフィスに新入社員が来ました、Welcome xx! 今月の売上はxx、昨対xx%、先月比xx%で目標と比べてxx%...などです。読んでいるとまぶたが重たくなるような内容です。ざっと目を通した後、受信トレイからすぐに消しています。
たまに読んで楽しいのはオフィスイベントの話。先週、ニューヨークオフィスの有志x名がチャリティーマラソンに参加しました、フランクフルトオフィスとデュッセルドルフオフィスはドイツ西部の同業者サッカー杯に参加し見事準優勝、ロサンジェルスオフィスはナパバレーにワイン試飲に行きました等々です。写真を見て知人を探したり、国による特色をみつけるのが楽しいです。アメリカ西海岸のオフィスの人々は、ゆるーい服装。女性はタンクトップにショートパンツ、男性はTシャツにハーフパンツなどで写っています。反対に、ドイツオフィスの人々は男性の場合襟付きのシャツだったり、女性もショートパンツまではいきません。どこのオフィスか書いてなくとも、写真の背景と服装で大陸はなんとなくわかります。

そんなニュースレターですが、先週のものは出色の出来栄えでした。
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主役はシカゴオフィスに勤めるRicky。事件は出張先のペルーからニューヨークに行く最中に起こりました。空港のセキュリティーチェックでランダムに選ばれ、通常より特別なX線にかけられることになったそうです。はいはい協力しますよと気軽にX線にかかったところさあ大変。機械のミスで「ドラッグ密売人の可能性あり」と判定されてしまったのです。その後の二日間はRickyの人生で最悪の時間だったとか。尋問に薬物検査、病院での身柄拘束など取り調べフルコース。驚き病院まで駆けつけてくれたクライアントの協力もありようやく無実が判明した48時間後まで、一睡も出来なかったそうです。ああ、哀れリッキー。
しかし、彼が本当にすごいのはここから。ようやく解放されニューヨークオフィスに立ち寄ったのも束の間、二日後には次の出張先へと旅立ったそうです。で、今度の行先は?......コロンビア。ああ、リッキーに幸あれ。

「ねえ、今週のニュースレター読みました?」同僚のCarolineに話しかけました。
「まだです」あら珍しい。たいしたニュースじゃないことも多いとブツブツ言いながらいっつも楽しみにしてるのに。
「今日の、すっごく面白かったらすぐに読んでみてください~」

数分経過。

「Oh, that poor guy!」ゲタゲタ笑ってます。
「わたしは会ったことないけど、知っている方ですか?どんな人?」密売人に間違えられただなんて、どんな人か興味津々です。
「恒例のクリスマスパーティーで会ったことがあるので、知ってますよ。ちょっと派手というか、かなりファッショナブルです。クライアントにラテンアメリカの企業が多いから出張も多いって言ってました」

なるほど!
欧米で少ないブランド物を持ち歩く男性、お洒落な服装→生活に余裕あり
リッキーという名前→ラテン系
派手な雰囲気→…ひょっとして硬い職業でない?
米国と南米の頻繁な往来→仕事でどちらの国にも用事がある

状況証拠は出揃っています。

つまり、リッキーはランダムに選ばれたのではなく、あらかじめ当局から怪しまれていたのかもしれません。そこでセキュリティーがひっかかったものだから、向こうとしては予想通りの展開。やっぱりお前は密売人だったのか!尻尾をつかんでやる!と意気込んだことでしょう。
うむむ、納得。

「しかしリッキー、勇気あるというかえらいですねえ。いくら出張とはいえ、わたしがそんな目にあったらしばらくは空港に行きたくないなあ。しかもコロンビアだなんてまた麻薬組織で有名なところへ…」
「えー、でもネコシマさん、今回捕まったから出張はしばらく控えて…だなんて余計怪しいじゃないですか」
た、たしかに。ちっ、危ないところだった。今回の騒動で目をつけられちまったからしばらくは大人しくしておくか、だなんて容疑者度アップです。しかしまあタフな奴やなあ。

そういえば、少し前のニュースレターではイランの企業からの依頼を受けて出張した際、身の安全のためにクライアントが滞在中ずっとボディーガードをつけてくれたと、本人+ボディーガードx2の三人の記念写真を見たこともあります。わたしはせいぜい国内出張でのほほんとしているけど、働いているオフィスによってはすごい環境にあるんだなあ。

では、わたしは少し危なさそうな国への出張があればどうするか。
……断れそうな状況だったら、多分断るように思います。未知のことでも興味があればチャレンジしてみたいという方ですが、さすがに危険な環境に自分から飛び込んで行きたくはありません。コロンビアは元々の固有文化と植民地支配による南欧の影響が混ざり合って、独特の美しさがあるとは聞きますが。

昨今治安が悪化しているといわれるとはいえ、日本の小市民である我が身の平穏無事さに安堵した金曜午後でした。

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by monisha | 2010-08-21 23:54 | Odds & ends

by monisha